日本では全く伝えられることのない David Gunn 氏の解任劇ですが、反響は全米に広がり、様々な反応を見せています。日本でニュースにならないのは、当然ですが。。
David Gunn 氏はニューヨークの地下鉄やワシントン、トロントなどで交通システムを立て直した後、3年前にアムトラックのリーダーとして迎えられました。アムトラックの利用客は増加し、評判は決して悪くありません。実際に、今回の解任劇を歓迎する声はなく、怒りと復帰を望む声がほとんどです。
Some of Amtrak’s supporters immediately pledged to seek his re-instatement.
Amtrak’s President Is Fired by Its Board – New York Times
The senator* called Gunn’s removal ”a crushing blow to Amtrak’s hopes for success and reform.” *The Senator = Charles Schumer
AP
では、なぜ解任されたのか。解任を決定したのは Amtrak board で、日本語の名称がありませんので、「委員会」としておきます。この委員会のメンバー全員はブッシュ政権によって送り込まれた人々です。
The Amtrak board — every member a Bush appointee — fired the service’s president, David Gunn, the man who almost single-handedly, with one hand tied behind his back by his board, was saving the service.
The Daytona Beach News-Journal: Editorials: Amtrak headless
アムトラックはかつて一度も利益を出したことがなく、補助金によって運営を支えられてきました。今年2月、ブッシュ政権は2006年度の予算案を発表しました。そこにはアムトラックへの補助金ゼロが示されていました。これに David Gunn 氏は「これは倒産しろという意味ではないか」と猛反発します。
補助金はというと、下院、上院を通過する過程で11億6000万ドル(6年間)という額まで引き上げられ、これにブッシュ政権は苛立っていました。それが今回の解任劇へと繋がっていきます。
Rep. John Mica (R-Fla.) said Gunn was fired because of a clash over the board’s vote in September to authorize splitting off the Northeast Corridor, an idea backed by the Bush administration.
AP
ブッシュ政権が狙うのは何か。おそらく利用客の多い北東部のボストン〜ワシントンDC、カリフォルニア、シカゴ近郊の一部、だけを残すというのが、言われているところです。他の地域については、各州や都市がお金を出せばいい、ということです。アムトラックを地域別に分断するわけです。そもそも長距離路線を残そうという気はないのが本音でしょう。
The Bush administration has favored ending Amtrak subsidies and turning passenger rail into regional services operated by the states with federal grants. Amtrak supporters worried that separating the Northeast Corridor marked the first step in breaking up the railroad.
Washington Post: Amtrak to Spin Off Corridor
アムトラックを分断し地域ごとの運営をすることで、沿線の州や自治体に補助金を求めやすくなる、ということだそうです。しかし、これは長距離路線を廃止に追い込むのも目的だという見方がほとんどです。
It’s no secret that the Bush administration wants to destroy Amtrak as we know it, retaining the heavily used Northeast Corridor and letting the other services die or be adopted by states that are fighting budget deficits and have little or no money for a vital transportation link.
HNN – HuntingtonNews.Net
アムトラックが名前を変えようと、列車が走り続けるボストン〜ワシントンDCはなんの心配もいらないかもしれません。では、地方の町はどうなるのか。これが問題です。車を持たない人は、運転できない人はどうなるのか。バスがあるかもしれません。しかしグレイハウンドですら、この数年でバスストップを大幅に減らしてきています。アメリカの交通システムは都市集中で地方を無視しているようにさえ思えます。
Where demand exists, private enterprise will supply. But alternative transportation serves a public who more often than not can’t afford their own automobiles or for-profit fares, a public unable to get to jobs or children to day care or home for family funerals will be isolated in their poverty and be forced to fall back on the government to feed and shelter them. Bush expects them to do it all on their own.
The Daytona Beach News-Journal: Editorials: Amtrak headless
やはりブッシュ政権の考え方は「地方は勝ってに自分たちでやればいい」なのでしょうか。長距離路線に乗っている人は観光客だけではないのです。実際、乗ればわかりますが、コーチなどは多くが現地の人です。スタンダードの寝台が混んでいるのは、ビジネスマンが利用しているからです。
David Gunn氏のいた3年間でアムトラックは乗車数を増やしています。今年はアセラの運休、ハリケーンの影響があったにも関わらず、乗客数は伸びていました。もし長距離路線が廃止に追い込まれたとき、どんなことになるのか、ブッシュ政権はあまり考えていないのでしょう。
Filed under: 補助金 | タグ: 解任 ブッシュ政権 長距離路線 補助金 | posted by 管理人 @ 2005 年 11 月 11 日 No Comments »
昨夜、解任されそうだとエントリーしたら、今度は解任決定のニュースが来ました。AP、ロイター、大手新聞社、主要ニュースサイトが一斉にこのニュースを伝えています。
New York Times: Amtrak’s President Is Fired by Its Board
Reuters: Amtrak fires chief executive David Gunn
Forbes.com: Amtrak’s Board Derails Its President
なんとも痛烈です。これでアムトラックは一つの転換期をむかえます。以下、ロイターの記事を引用。
Amtrak’s board of directors did not give a reason for its decision to dismiss Gunn, but he has resisted many of the broad proposals pushed by the Bush administration to reform business practices at the railroad.
委員会が解任の理由を示さなかったというのが、特徴的。ブッシュ政権が後押しする委員会の提案を拒否し続けた、ということが解任の理由ではないかという見方です。
続いてAPの記事です。
Gunn has repeatedly clashed with the Bush adminstration, especially over federal subsidies for the program.
Amtrak has never made money in its 34-year history. Board Chairman David Laney says Amtrak requires a leader who will aggressively tackle the company’s financial, management and operational challenges.
こちらもブッシュ政権と対立があったことを始めに紹介。2005年2月から続いた補助金の問題が引き金でした。チェアマンの発言は「新しいリーダーの必要性」を説いています。
その「新しいリーダー」はブッシュ政権に近い人物が選ばれるでは、という懸念があります。アムトラックにとってのXデーがいよいよ見え隠れしてきました。
追記:Norman Y. Mineta 氏のコメントが出てましたので、引用します。*Mineta氏はブッシュ政権のSECRETARY OF TRANSPORTATION。
“I have known David Gunn many years and respect the work he did to help streamline and stabilize Amtrak. However, it is the job of Amtrak’s board of directors to make decisions that are in the best interest of Amtrak. I am confident in the board’s judgment and its belief that different leadership is needed to address the serious challenges facing the company. The U.S. Department of Transportation stands ready to support Amtrak as it reforms its long distance services, upgrades the Northeast Corridor and establishes new fiscal accountability measures and will continue to work with Congress to ensure the future of intercity passenger rail.”
David Gunn氏をフォローするような言い回しから始めていますが、”I am confident”以下の部分でこの解任劇を後押ししていたことが伝わってきます。後半では ”long distance services”(長距離路線)も守る、というような事も言っています。しかし、これまでのMineta氏の発言は、こんなフォローでは納得できないようなものでした。一方的に、沿線の地域がお金を出せばいい、というのがMineta氏の主張のようですから。。。
Business Week Online では既にこの解任劇について批判が出ていることを伝えています。
New York Times では David Gunn氏のコメントを紹介しています。
“Obviously what their goal is, and it’s been their goal from the beginning, is to liquidate the company.”
their goal の their とは Mineta氏やブッシュ政権周辺の方々やその提案を支持していた議員のことでしょう。goal は今回の解任。”it’s been their goal from the beginning”=「最初からそれが目的だった」という一言は一段と痛烈です。
Filed under: 補助金 | タグ: 解任 ブッシュ政権 補助金 | posted by 管理人 @ 2005 年 11 月 10 日 No Comments »
AP通信発のニュースで、すこし衝撃的な見出しが出ています。全米のメジャーな新聞も、このニュースを伝えているようです。USA TODAY や Washington Post, CNN など主要なニュースサイトも取り上げています。AP発なので、内容はどこも同じですが。。
“Amtrak President to Be Fired”
タイトルそのままで、まさにトップの解任になりそうです。そのトップはCEOの David Gunn 氏。補助金の必要性を強調していた人です。一方で、ブッシュ政権のアムトラックに対する姿勢は、国の予算で赤字路線は続けていられないというもので、今年は一段と風当たりが強かったかもしれません。
今回、こういった解任になりそうな背景には、ブッシュ政権以下のアンチ・アムトラックと言われている人たちからの圧力的なものもあったのかもしれません。本当にアンチなのかは分かりませんが、アムトラックの主要な収入源である北東部の路線をアムトラックから切り離そうという動きさえも見せています。アンチの代表のように言われているのが、Transportation Secretary を努める日系の Norman Y. Mineta 氏(どうでもいいですが、フジモリ大統領に顔が似ている)。
そうなると、長距離路線をアムトラックだけで続けていくのは、さらに困難なります。日本からの利用客が多い、西海岸とシカゴを結ぶ3路線などのサービス継続も危ういわけです。観光客のみならず、西部の地方にある小さな町などでは、アムトラックを貴重な交通手段としている方々がいます。
結果分かりませんが、今回の解任劇は、自分のようにあくまでも観光の一つとしてアムトラックに乗って来た人たちには関係ないようなニュースに思えるかもしれません。しかし数年後、アムトラック旅行なんてものは過去のものになってしまう可能性も。長距離路線も守ろうと頑張ってきたトップが交代してしまうというのは、なんだか寂しいものですね。。
Filed under: 補助金 | posted by 管理人 @ No Comments »
ロイター発のニュースで、久しぶりにアムトラックの「経営」に関する話題が入ってます。
タイトルは以下のようになっています。
“Plan would end Amtrak control of NE Corridor”
NE Corridor って言うのはアムトラックが自社路線を保有しているワシントンDCとボストン間の路線。アセラエクスプレスなどの高速列車が走り、飛行機とも競合している、ビジネス的にも重要な路線です。
今後、この重要な北東部地域においてアムトラックが自由にサービスを行うことは難しくなるようですね。ワシントンDC〜ボストンの列車は今まで通り、走り続けると思います。ただ、いろんなところで、変化が出てくるかもしれません。
影響が出るのは、この北東部じゃなくて旅行者に魅力的な長距離路線。アムトラックの「お金の問題」はあまり気にならないけど、長距離路線がなくなってしまうのは、悲しいですね、やっぱり。
これまでに何本もアムトラックに乗って、また何年後かに乗りたいな〜って思ってる列車がたくさんあります。でも5年後にはほとんど走ってないかもしれません。もちろん、頑張ってる可能性もありますが。。
カトリーナで被害が出たときに、アムトラックの列車が避難時の手段として使われていたそうです。最初、アムトラック側が提案したら拒否されたなんてこともあったみたいですが。9/11テロのときも飛行機が止まって、活躍したのはアムトラックでした。
でもインフラとしてのアムトラックの評価は低いのでしょうかね。。
CNN.com – Plan would end Amtrak control of NE Corridor – Oct 14, 2005
Filed under: 補助金 | タグ: 将来 | posted by 管理人 @ 2005 年 10 月 15 日 No Comments »
補助金についての話 - その2
すこし前に、委員会で5億5千万ドルが承認されたという話を書いたのですが、その続き。こないだの時点では、長距離路線を中心に18路線が廃止になるという話が出ていました。その後、ちょっとした進展が。
先月末、この5億5千万ドルが下院で否決されました。更に、新たに6億2600万ドルを加えるという修正案が承認されたのです。この額だとほぼ今年度の補助金と同じになります。
でも相変わらず、「アムトラックの補助金は税金の無駄遣いだ」と主張している議員も多いです。よく聞かれるのが、「Sunset Limited なんかは、乗客一人当たり400ドルの税金が使われてる」というような話。確かに、そんなこと言われると、乗るのが悪い気になってしまいそう。ちなみに、委員会が示したデータによると、California Zephyr は1人当たり 179ドル、Coast Starlight は 94ドルが必要らしいです。最初に出てきた18路線というのは、乗客1人当たり30ドル以上の補助金が必要という条件だったので、確実にこの2路線も含まれてます。
このあと、上院でどうなるか。。。
Filed under: 補助金 | posted by 管理人 @ 2005 年 7 月 4 日 No Comments »
ちょっと真面目な話を。
今年の2月、ブッシュ政権は2006年度予算案を発表しました。これが全ての発端でした。毎年のように、アムトラックの補助金をめぐって、いろいろゴチャゴチャとやっているんですが、今年は半端じゃないようです。
内容はというと、基本的に全ての補助金を撤廃。北東部など一部の路線にだけ、3億6千万ドルを用意するという内容でした。とにかく長距離路線をなくしたくてしょうがないんですね。
アムトラックが求めていた額は18億2千万ドルでした。それを考えると、予算案のゼロってのは、「もう倒産してください」ってことを意味してたわけです。ちなみに2005年度はどうだったかというと、予算案で9億ドルだったのが、議会で12億ドルまで引き上げられました。
結局、委員会で承認されたのは5億5千万ドル。予算案よりは2億ドル近く増えたんですが、この額ではどうしようもないようです。東海岸の大都市圏、シカゴ近郊、カリフォルニアの短距離路線の一部は守られるとしても、長距離路線は存続不可能になってしまいます。
Sunset Limited, Empire Builder, City of New Orleans などの長距離路線には、こんどこそ乗れなくなってしまうかもしれません。お早めにどうぞ。
Filed under: 補助金 | posted by 管理人 @ 2005 年 6 月 22 日 No Comments »
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